2026年9月12日(土)の Dose

10本(論文7・リリース3)

論文 画像診断AI 注目

中国5施設で実施した、AI支援による胎児頭蓋内奇形の超音波検出に関する多施設クロスオーバーRCTという論文。

  • 経験3〜8年のソノグラファーが、ハイリスク妊婦の超音波検査1584件をAI支援あり・なしの順序でクロスオーバーして実施
  • AI支援で頭蓋内奇形の感度が最大11.8ポイント上昇し(p<0.0001)、特異度は非劣性基準を満たした
  • 診断手技やAI支援に関連する有害事象の報告はなし。専門医パネルの動画レビューを参照基準とした

出典:Lancet Digit Health / Evaluating AI-assisted detection of fetal intracranial malformations in prenatal ultrasound practice: a multicentre, self-crossover, randomised controlled trial in China.

サトシサトシ
感度が上がって特異度も落ちないなら現場は使う。5施設1584件という規模感が実装の本気度を示している。
論文 生成AI・LLM 注目

「本当に合っていますか」という追加の一言でLLMの診断が揺らぐかを調べた研究という論文。

  • 10種のLLMに臨床ケース120件を4条件×3回×2パスで提示し、回答28800件を診断正誤で評価
  • 「Are you sure?」の一言で正答率が51.8%から42.2%に低下し、正解から誤答への転換が544件と誤答から正解への198件を上回った
  • GPT-5は追加質問後も精度75.3%を維持したが、Claude Sonnet 4は精度が36.4ポイント低下した

出典:Artif Intell Med / Too agreeable to be accurate? Sycophancy and diagnostic instability of large language models in medical diagnosis.

サトシサトシ
「本当に?」と聞かれただけで正答率が10ポイント近く落ちるなら、臨床導入前の耐性評価は必須だと思う。
論文 臨床意思決定支援 注目

肝細胞癌の治療方針について生成AIと肝胆膵MDTの一致度を検証した後ろ向き研究という論文。

  • 2023年1月〜2025年2月にMDTで検討された肝細胞癌患者100例の匿名化サマリーをChatGPT-4に提示し、推奨を4段階の一致度で分類
  • 治療手技まで一致する高一致度は81%(技術レベルの完全一致は53%)、低一致度は19%でp=0.001と高齢患者に多かった
  • 不一致例の多くはMDTがより積極的な個別化治療を選んだケースで、単施設の後ろ向き解析という限界がある

出典:Ann Surg Oncol / Concordance Between a Generative Artificial Intelligence Model and a Hepatobiliary Multidisciplinary Team in Hepatocellular Carcinoma Management: A Retrospective Study.

サトシサトシ
肝臓の治療方針は個別性が強いので、8割一致より残り2割の高齢患者をどう拾うかの方が現場の実感に近いです。

集中治療の複雑な症例で、生成AIと人が作った引き継ぎ要約の質を盲検比較した研究という論文。

  • MIMIC-IIIから抽出した多疾患合併患者64例の要約をAIと臨床家が別々に作成し、盲検で有用性などを評価
  • 有用と評価された割合はAI要約75%、人手要約76%とほぼ同等で、正確性や統合の質もAIが同等かやや上回る領域があった
  • AI要約は簡潔さの評価が55〜67%と人手より低く、個々のデータ要素をまとめきれない場合があった

出典:JAMIA Open / Optimizing generative artificial intelligence for clinical summarization: a blinded comparison study of automated versus human care planning synopses.

サトシサトシ
要約の質が人と同じでも簡潔さで負けているのは実感通りです。冗長さを削る調整がまだ要ると思います。

電子カルテ導入の前後で医師・看護師の業務負荷や燃え尽きを追跡したドイツの前向きコホート研究という論文。

  • 医師・看護師163名(導入前87名、導入5か月後76名)を対象に、標準化調査と聞き取りで業務やバーンアウトを比較
  • ワークフローやバーンアウトの指標全体では導入前後で有意差はなかったが、看護師の情報過多は有意に減少した
  • 一方で医師の脱人格化は導入後にむしろ有意に増加しており、職種ごとの導入プロセスの違いが影響した可能性がある

出典:JAMIA Open / Effects of electronic health records implementation on workflow and health care provider outcomes: a prospective, multi-professional cohort study.

サトシサトシ
入れれば良くなるわけではないという話が、有意差なしという数字ではっきり出たのは価値がある。

ドイツの大学病院で電子カルテから入院患者の転倒リスクを予測し、SHAPで説明可能にした後ろ向き研究という論文。

  • 2016〜2022年の入院患者データでアンサンブルモデルを構築し、SHAP値をもとにリスクプロファイルを9クラスタに分類
  • テストセットでのAUROCは0.95、AUPRCは0.36で、ガイドライン項目のみの基準モデルを上回った
  • 単一のドイツの大学病院データによる検証にとどまり、外部施設での検証が今後必要とされている

出典:Npj Health Syst / Explainable SHAP-space fall risk profiling from electronic health records for inpatient prevention planning.

サトシサトシ
転倒対策を一律にしないための切り分けとしては良さそうですが、単施設データなので自院にそのまま使えるかは別問題です。

がん治療後の通院で、訴えている症状によって遠隔診療の提示や受け入れがどう変わるかを調べた観察研究という論文。

  • 米国の大学医療センター等に通う患者610名(対面496名、遠隔114名)を対象に、前後の電話調査とカルテを紐付けて解析
  • 悲しみを訴える患者は遠隔診療を提示される割合が22.1%対29.5%と低く、提示後の受諾率も59.8%対75.0%と低かった
  • 症状スコアの変化は対面・遠隔いずれも受診前後で有意差はなく、近い期間の症状転帰は同程度だった

出典:Telemed J E Health / Telehealth Versus In-Person Visits in Routine Oncology Care: Comparing Patient-Reported Symptom Outcomes.

サトシサトシ
悲しみを訴える患者ほど遠隔を勧められにくいのは皮肉だ。誰に遠隔を勧めるかという運用設計の問題だと思う。
リリース その他 注目

東京大学と共同開発した完全自助型の認知行動療法アプリについて、労働者1090名を対象にしたRCTで抑うつ症状の改善効果を確認したという発表。

  • 常勤労働者1090名を利用群545名と対照群545名に無作為に割り付け、初回・3か月後・6か月後で効果を追跡
  • 抑うつ症状(PHQ-9)は6か月後にd=−0.15(P=0.01)、心理的ストレス(K6)は3・6か月後にd=−0.14〜−0.17(P=0.01〜0.02)で有意に改善したとしている
  • 専門家の関与がない完全自助型で全セッション完遂率は53.0%。効果は6か月後まで減弱しなかったとしている

出典:emol / メンタルヘルスケアアプリ『emol』、東京大学との共同研究で「働く人のための認知行動療法セルフケアプログラム」の抑うつ症状改善効果を無作為化比較試験で確認

サトシサトシ
完全自助で53%完遂は高い方だと思います。健診後の一次予防にどう組み込むかが気になります。
リリース 規制・実装・医療政策 注目

千葉大学などの研究チームが、5週間のデジタル認知行動療法アプリと睡眠薬ゾルピデムを比較した医師主導治験の結果を発表したという発表。

  • 不眠症患者24名を対象に、2023年9月〜2025年2月にアプリ群とゾルピデム5mg群を比較する医師主導治験を実施したとしている
  • アプリ群は入眠時間が平均約20分短縮しゾルピデム群と同等の効果。終了5週間後の追跡ではアプリ群がさらに29.02分短縮したとしている
  • 副作用はゾルピデム群で日中の眠気が1件、アプリ群はゼロだったとしている。対象24名の探索的治験で大規模検証は今後としている

出典:国立大学法人千葉大学 / 認知行動療法を取り入れた不眠症治療アプリの効果を医師主導治験で確認―5週間で不眠症状を軽減できる医療機器プログラムが新たな選択肢に―

サトシサトシ
24人の探索的治験なので過大評価は禁物だが、薬に頼らない選択肢の治験データが積み上がった意味は大きい。
リリース その他

医薬品流通改善プラットフォームを運営する9lione(クリオネ)が、シリーズAのエクステンションラウンドを実施したという発表。

  • 横浜キャピタルらを引受先とするシリーズAで1.2億円を調達し、さらにFUNDINNOでのクラウドファンディングで追加調達を実施しているとしている
  • 株式投資型クラウドファンディングを含めた累計調達額は4.4億円で、資金は拠点網拡大とプロダクト開発、組織体制強化に充てるとしている
  • 同社は医薬品卸売販売業の許可を持つ卸売事業者として、医療機関の余剰医薬品を必要とする施設に融通する仕組みを提供しているとしている

出典:クリオネ / 医薬品流通改善DXプラットフォーム「9lione(クリオネ)」、シリーズA1.2億円、累計調達額は4.4億円に。エクステンションラウンドをFUNDINNOで実施

サトシサトシ
医薬品の需給ミスマッチを卸免許ごと抱えて解消しにいく構造が面白い。累計4.4億円という規模感もこの領域では大きい。